抄録
【目的】骨格筋障害モデルラットを作製し,骨格筋のトランスクリプトーム(TGx)解析および尿・血漿のメタボローム(TMx)解析を行い,
新規骨格筋障害評価バイオマーカーを見出すことを目的とした。
【方法】9週齢の雄性F344ラットに2,3,5,6-Tetramethyl-1,4-phenyleneamine(TMPD, 3mg/kgおよび9mg/kg)を単回経口投与し,血
中creatine kinase(CK)測定および病理組織学的検査を実施した。TGx解析にはAffymetrix社のGeneChip Rat 230 2.0アレイを用い,
MTx解析にはWaters社のAcquity UPLC / LCT PremierTOF-MSシステムを用いた。
【結果と考察】TMPD 9mg/kg投与群で血中CK-MM(骨格筋由来のCKアイソザイム)レベルが高値を示し,病理組織学的検査によっても
骨格筋障害誘発が確認された。TMPD 3mg/kg投与群では骨格筋障害誘発は確認されなかった。TGx解析の結果,TMPD 9mg/kg投与
群で1,860遺伝子が発現レベル増加,1,268遺伝子が発現レベル減少を示した。Ankrd1,Serpine1,Mt1a,Ccl2遺伝子は用量依存
的な発現レベル増加を示し,9mg/kg投与群で対照群の20倍以上の発現レベル増加を示した。一方MTx解析の結果,TMPD 9mg/kg投
与群で尿では600個以上の,血漿では360個以上の代謝物濃度に変動が認められた。これら骨格筋障害応答性遺伝子および代謝物は新
規な骨格筋障害評価用バイオマーカーとなり得る可能性が期待されるものの,その妥当性についてはCerivastatinを用いた骨格筋障害
モデルのデータと共に検証・考察する予定である。