日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P70
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一般演題 ポスター
酸化チタンナノ粒子のラット皮膚透過性
*五十嵐 良明相場 友里恵内野 正西村 哲治
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抄録
酸化チタンは白色顔料,光触媒材料,紫外線散乱剤として,塗料や化粧品等に広く使用されている。化粧品では,粒径をナノメートル サイズまで細かくし,表面をコーティングして分散性を良くした酸化チタンが用いられており,肌につけたときの紫外線防止効果及び 透明性の向上に役立っている。酸化チタンナノ粒子の皮膚透過性については既に多くの研究が実施され,種々の結果が得られているが, ナノ粒子の安全性評価には投与段階の粒子径が重要と考えられる。本研究では,安定した酸化チタン粒子(平均一次粒子径35 nm,ル チル型,表面コーティング有り)の10%ナノ分散液を作製し,雄性ラットに対し24時間の閉塞塗布を28日間反復した。別に,同懸濁 液をラット背部に皮内注射し,これら投与での酸化チタン粒子の皮膚吸収性と生体内動態を検討した。酸化チタンを塗布及び皮内注射 いずれの方法で投与しても,体重及び臓器重量は対照群のそれと差は認めなかった。各臓器の病理組織学的検査で,酸化チタンに起因 した異常,変化は認められなかった。皮内注射した部位ではマクロファージの集積など異物に対する反応が認められた。酸化チタン塗 布部位の電子顕微鏡観察では,酸化チタン粒子は角質層にとどまり真皮層にまでは達していなかった。臓器中のチタン濃度は,酸化チ タンの塗布群と対照群との間で有意な差はなかった。大量の酸化チタンが角質層以下に入ったと仮定した皮内注射でも臓器中のチタン 濃度に変化はなかった。以上のことから,酸化チタン粒子はナノレベルの粒径で投与されたとしても,皮膚透過して定量限界以上に臓 器に蓄積することはなく,毒性学的作用も起こらないと考えた。
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© 2010 日本毒性学会
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