抄録
【目的】再生医療品の移植後の腫瘍化は最も懸念されるリスクの一つである。町田らは,重度免疫不全マウスのNOD/Shi-scid , IL-2Rγ
nullマウス(以下,NOGマウス®)の高い腫瘍細胞検出力について報告し,このマウスの有用性を示している。しかし,実際にGLP基準下
で再生医療品の造腫瘍性試験に,このマウスを用いた例はない。今回,我々は,GLP基準下で骨格筋芽細胞シートの造腫瘍性試験を行い,
NOGマウス®の有用性について検討した。【方法】「改定1314号指針」を参考に,規定の培養期間を超えて培養したヒト由来の骨格筋芽
細胞を被験物質とした。WHOガイドラインを参考に,雄性NOGマウスの皮下にこの被験物質を移植し,一般状態観察,体重測定及び
移植部位の結節サイズの測定を行った。半数の個体は結節消失直前に,残りの半数は移植3箇月後に剖検し,病理検査を実施した。陽
性対照物質として,HeLaS3細胞を用いた。【結果】陽性対照群では全例で移植細胞による経時的な結節の増大が確認された。一方,骨
格筋芽細胞移植群では全例で結節が消失し,病理検査においても,問題となる所見は認められなかった。また,GLP基準下で本試験を
遂行することができた。【考察】GLP基準下で,再生医療品の造腫瘍性試験に,NOGマウス®を用いることが可能であった。優れた腫瘍
細胞検出力を有するこのマウスは,今後,このような製品の造腫瘍性試験において有用であると考えられる。本試験において,規定の
培養期間を超えた骨格筋芽細胞で造腫瘍性が検出されなかったことは,この製品の臨床での腫瘍化の懸念を払拭するものと考えられた。
なお,NOGマウス®は(財)実験動物中央研究所との共同研究により入手したものである。