日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-4
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ダイオキシン曝露が引き起こすマイクロRNA調節の撹乱と肝障害
*吉岡 亘東山 渉遠山 千春
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抄録
【目的】マイクロRNA (miRNA) は、種々の遺伝子の発現調節を介して、重要な生体機能に関与することが報告されてきた。ヒトでは最大30 %の遺伝子がmiRNAによって調節を受けると推定されている。しかし、環境化学物質への生体応答におけるmiRNAの調節については、ほとんど解明されていない。そこで、ダイオキシンが引き起こす生体応答におけるmiRNAの関与を明らかにすることを目的として、マウスに対する曝露実験を行った。
【方法】C57BL/6系統の雄マウス(9週齢)に、2,3,7,8-四塩素化ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)を50 μg/kg の用量で腹腔内に単回投与した。また、TCDDに加えて、20および40 mg/kg/dayのCOX-2選択的阻害剤NS-398を連日腹腔内投与した。投与2日と14日目に麻酔下で解剖し肝臓と血液を採取した。血漿中AST とALTはFuji DriChem7000を用いて測定した。組織はホルマリン固定後にHE染色した。肝臓中miRNA量は、polyA polymerase-RT-qPCR法によって解析した。miRNA前駆体と標的遺伝子(COX-2、cFos、EZH2)のRNA量とタンパク質量を、それぞれRT-qPCR法とウェスタンブロッティング法で解析した。
【結果および考察】TCDD曝露後8日目以降に顕著な肝障害が観察された。TCDD曝露2日後には既にmiR-101a量が減少しており、この減少は前駆体量の減少に起因していた。この時点で、miR-101aの標的遺伝子であるCOX-2、cFos、EZH2のタンパク質量が増加していたことから、miR-101aの減少がこれら標的タンパク質の発現量を増加させたと考えられた。COX-2がプロスタグランジン合成の律速酵素であることから、COX-2発現上昇が炎症性プロスタグランジン産生量を増加させて肝障害に至るとの仮説を立て、COX-2選択的阻害剤NS-398投与実験により検証した。血中ALT及びASTレベルのTCDD曝露による上昇は、NS-398の投与量依存的に抑制された。miR-101a量がNS-398の影響を受けなかったことから、miR-101aの減少がCOX-2発現上昇や肝障害の結果ではなく原因であると考えられた。以上、TCDD曝露がマウス肝臓中のmiR-101aを減少させること、miR-101aの標的であるCOX-2が曝露による肝障害の原因であることを見出した。
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© 2011 日本毒性学会
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