抄録
【目的】近年,マイクロRNA(microRNA, miRNA)が,さまざまなmRNAを制御し,生体機能へ大きく影響していることがわかってきた。しかし,毒性分野での研究はまだ少なく,生殖毒性との関連性についてはほとんどわかっていない。本研究では,miRNAと胎盤毒性との関連性を明らかにするため,抗がん剤である6-mercaptopurine (6-MP)を妊娠ラットに投与し,miRNA発現への影響を検討したもので,昨年のトキシコロジー学会での続報として紹介する。
【方法】9週齢の妊娠SDラットに,olive oil(対照群)および6-MP(60 mg/kg)を妊娠11日および12日に腹腔内投与し,妊娠13日または15日に帝王切開して胎盤および胎児を採取した。採取した胎盤は,H&E染色して組織学的な評価を行った。また,cleaved caspase-3抗体を用いて免疫染色を行った。得られた胎盤から総RNAを抽出し,DNAマイクロアレイ解析を行い,組織学的変化と遺伝子変動との関連についても検討した。また,miRNA array解析により,発現変動したmiRNAを選択した。
【結果および考察】胎児異常として既報に示されているように,胎児に四肢の発達障害など6-MP投与による影響がみられ,胎盤異常としては,妊娠15日の胎盤で重量の減少傾向が認められ,組織学的に薬物の影響が迷路層および基底層に及んでいた。またcaspase-3抗体陽性細胞が迷路層にみられた。これらの変化は既報(古川らの報告)と一致するものであった。Microarray解析の結果,apoptosisに関連している遺伝子の変動がみられ,組織学的な結果と相関している。miRNAの変動は主として妊娠13日にみられ,apoptosis関連のmiR-21, miR-34aなどが変動しておりmiRNAレベルでの相関性を提示している。