抄録
【目的】体内に長期的に埋植,留置される医療機器の生物学的安全性試験として,臨床適用部位に埋植,留置する埋植試験が推奨されている.骨埋植試験については,ISO 10993-6においてウサギ,イヌ,ヤギ,ブタ等の頸骨あるいは大腿骨への埋植が例示されている.我々は,動物愛護の観点から欧米を中心に実験動物として普及しつつあるミニブタ,中でも作出されたばかりの世界最小・超小型ミニブタであるマイクロミニピッグ(MMP: MicrominipigTM)を用いて骨埋植試験を行った.
【方法】雄の8~10箇月齢(約10 kg)MMPを用いた.筋肉内および骨埋植試験の陰性対照として用いられる高密度ポリエチレンロッド(直径2 mm×12 mm,円柱状)(以下,埋植材)を以下の方法で左右大腿骨の各1箇所に埋植した.大腿部の外側を剪毛,消毒し,皮膚および筋層を切開し,大腿骨を露出させた.手術用電動ドリルを用いて埋植材と同形の骨孔を作製し,埋植材を骨孔に挿入した.術部の消毒,鎮痛剤および抗生物質の投与を3日間行った.埋植前,埋植後2,6,13および27日目に血液学的検査および血液生化学的検査を行い,埋植日および埋植後27日目にX線写真を撮影した.埋植後28日目に放血安楽致死させ,大腿骨および周辺組織を摘出し,肉眼的に観察した.また,埋植部位を2分割し,Hematoxylin-Eosin染色標本およびToluidine-Blue染色標本を作製し,病理組織学的検査を行った.
【結果】埋植後,一般状態および体重推移に異常はみられず,血液学的検査および血液生化学的検査においても変化はみられなかった.X線写真および肉眼的検査では埋植部位および周辺組織に炎症,壊死などの異常はみられず,病理組織学的検査では埋植材周辺に骨組織の再生が観察された.
【考察】MMPは骨埋植試験に有用であると考えられた.