日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: MS2-1
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若手研究者セミナー
薬物性肝障害の発症機序の解明研究
*矢野 梓深見 達基中島 美紀横井 毅
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抄録
【目的】薬物性肝障害は医薬品開発および疾病治療における安全性上の重大な問題である。その殆どは実験動物で再現できないため、非臨床試験において肝毒性を予測することが困難であると考えられている。薬物性肝障害の発症機序に関しては、薬物の代謝的活性化や免疫反応が関与することが示唆されているが、in vivoで実験的に示した報告は未だ少なく、不明な部分が多い。本検討では、現在までに報告されている薬物性肝障害動物モデルを用いて、薬物性肝障害の発症メカニズムを解明することを目的とする。
【実験方法】8週齢のBALB/cマウスに対しアセトアミノフェン、ハロタン、ジクロフェナク、フルタミドおよびジクロキサシリンなどの肝障害性が知られる薬物、または各薬物に対する同効薬を投与した後、経時的に解剖を行い、薬物性肝障害のマウスモデルを作製した。その後、ALT値、AST値およびTotal-bilirubin (T-Bil) 値を測定し、肝障害の程度を評価した。Real-time RT-PCRによる肝mRNA発現量とELISAによるタンパク質量の測定を行い、各薬物性肝障害モデルにおける炎症性因子および酸化ストレス関連因子の発現変動について評価した。
【結果および考察】薬物投与後のマウス肝臓において、多くの酸化ストレス関連因子および炎症性因子の発現上昇が認められた。その中でもreceptor for advanced glycation end prodcuts (RAGE)などの数種類の因子が肝障害性薬物において共通して発現上昇が認められ、発症に関わる重要な因子である可能性が示唆された。これらの因子について、薬物性肝障害発症との関連性および肝毒性評価系マーカーとしての可能性についての検討を行った。本研究の結果は、薬物療法や新薬の開発において有用な情報を提供するものと考えられる。
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© 2012 日本毒性学会
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