日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-20
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内分泌攪乱化学物質、生殖毒性、毒性発現機構
抗菌薬投与による肝内胆汁酸レベルの上昇の機序―回腸胆汁酸吸収トランスポーター発現の解析
*宮田 昌明山川 泰輝山添 康
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抄録
【目的】肝臓の胆汁酸レベルの上昇は肝胆道系の障害と密接に関連している。我々はマウスに抗菌薬を単独あるいは胆汁酸と併用投与すると対照群、胆汁酸単独投与群と比べて肝臓の胆汁酸レベルと血清中の肝障害マーカーが増加することを見いだした。複数種の抗菌薬で同様な結果が得られることより腸内細菌の減少が肝胆汁酸レベルの増加に関連すると考えられた。本研究では消化管からの胆汁酸吸収に着目して抗菌薬投与による肝胆汁酸レベルの上昇の機序の解明を実施した。
【方法】C57BL/6N雄性マウスにampicillin (ABPC) 100 mg/kgを投与し、投与後3、12、24時間後のマウス門脈血、肝臓、回腸、直前3時間の糞を採取した。
【結果】ABPC投与後門脈血中胆汁酸濃度の増加と糞中への胆汁酸排泄の減少が12、24時間に認められた。ABPC投与後12時間ですでに消化管管腔内の胆汁酸組成の変動が認められ、タウロコール酸(TCA)が有意に増加し、腸内細菌による代謝で生成するコール酸(CA)、タウロデオキシコール酸(TDCA)のレベルが検出限界以下まで減少した。消化管胆汁酸吸収に中心的な役割を担うapical sodium-dependent bile acid transporter (Asbt)の発現レベルを解析したところ、回腸mRNAレベルに変動は認められなかったが、ABPC投与後12、24時間の回腸刷子縁膜でAsbtタンパク質含量の有意な上昇が認められた。抗菌薬投与12時間後にCA、TCA、TDCAを投与するとAsbtタンパク質含量はCA、TDCA投与でコントロールレベル以下まで低下したがTCAでは変動しなかった。
【結論】腸内細菌による代謝で生成する胆汁酸(CA、TDCA)は胆汁酸吸収トランスポーターAsbtの発現をタンパク質レベルで負に調節しており、抗菌薬投与による腸内細菌の減少は回腸Asbtタンパク質レベルを上昇させ、消化管胆汁酸吸収を亢進させることで肝内胆汁酸レベルの上昇に関与していることが示唆された。
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© 2012 日本毒性学会
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