抄録
【目的】閉経女性はエストロゲン産生が急激に減少し更年期症状を発症する.これらの症状を緩和する目的でホルモン補充療法が実施されてきたが,長期ホルモン投与は発がんリスクを上昇させることが危惧される.植物由来成分にはエストロゲン様作用を示し,かつ乳がんリスクを減少させるものが存在する.そのためホルモン補充療法の代替ホルモンとして植物エストロゲンの利用が期待される.本研究では,多数の植物由来フラボノイド類を含むプロポリスのエストロゲン様作用について評価した.
【方法】試料:プロポリスのエタノール抽出物(EEP).in vivoエストロゲン様作用評価:卵巣摘出ラットに対して試験物質を経口投与.子宮および乳腺への影響に注目し評価.ER依存的作用であることを確認するためICI 182,780(ICI)を併用.HPLC分取:プロポリス中の各種成分をHPLCにて1分毎に分画.エストロゲン受容体(ER)結合試験:3H標識17β-エストラジオールを用いたER競合結合試験によりER結合性を測定.ルシフェラーゼ試験:pERE-Luc一過性発現ヒト乳がん細胞(MCF-7)を用いてエストロゲン様作用を評価.
【結果・考察】EEPにより子宮重量および乳腺上皮細胞は増加した.これらの作用はICIにより抑制されたことから,ER依存的であることが確認された.HPLC画分のうち,ルシフェラーゼ試験においてエストロゲン様作用陽性,かつER結合試験において高い結合性を示した5画分について精査した.このうちの1つの画分について活性成分としてケンフェロールと未同定成分の存在が確認された.この他の画分についても更なる検討を加えている.以上のようにプロポリスによるエストロゲン様作用は,多彩なエストロゲン様物質の総和として現れている.したがって,プロポリスを摂取することでエストロゲン減少による,生体内の恒常性のゆらぎを緩和できると考えられる.