日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-122
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ジフェニルアルシン酸投与マウスにおける小脳グルタミナーゼ活性変化
*北 加代子梅津 豊司鈴木 俊英越智 崇文
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抄録

ジフェニルアルシン酸(DPAA)は茨城県神栖市の地下水中から検出された有機ヒ素化合物であり、その地下水を使用した住民に小脳症状を主症状とする中枢神経障害がみられたことから中毒との関連が疑われている。これまで我々は、培養細胞を用いた検討から、DPAAがglutaminase Cタンパクの分解を促進し、それに伴って細胞内のphosphate-activated glutaminase (PAG)活性を低下させることを明らかにしている。PAGは中枢神経系において、興奮性神経伝達物質グルタミン酸の合成に関わる酵素であることから、DPAAによる小脳症状の発症にPAG活性の低下が関与する可能性が考えられる。そこで本研究では、DPAAによる小脳症状の発症にPAG活性の低下が関与するのかどうかを検討した。まず、6週齢のICR雄性マウスに体重1 kgあたり5 mgのDPAAを1日1回、35日間経口投与し、ロータ・ロッドテストおよびブリッジテストを課して小脳機能の指標となる協調的運動能力の変化を調べた。その結果、DPAA投与群では投与期間依存的にロータ・ロッドおよびブリッジ上での最大滞在時間の減少が認められ、DPAAが協調的運動能力の低下を引き起こすことが確認された。そこで投与終了後のマウスから小脳を単離し、小脳内のPAG活性およびグルタミナーゼ(GLS1)タンパクレベルを調べた。その結果、DPAA投与群と対照群の間でPAG活性およびGLS1レベルに有意な差はみられなかった。またDPAA投与群について、投与35日目のロータ・ロッド試験成績(最大滞在時間)と小脳PAG活性の相関性を調べたところ、両者間に相関関係は認められなかった。以上の結果から、DPAAはマウスの協調的運動能力の低下を引き起こすものの、その原因に小脳PAG活性の低下が関与する可能性は低いことが示唆された。

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© 2012 日本毒性学会
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