日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-159
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フェノバルビタール投与によるラット肝臓におけるALTおよびASTの遺伝子発現抑制
*武田 真記夫鈴木 穂高大塚 亮一山口 悟小嶋 五百合富田 真理子小山 彩高橋 尚史桑原 真紀吉田 敏則中島 信明原田 孝則
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抄録
フェノバルビタール(PB)やDDT等の肝薬物代謝酵素誘導剤の反復投与による肝発癌過程において,血漿中の肝逸脱酵素活性が減少することが知られている。臨床検査における血漿中肝逸脱酵素活性は肝傷害のマーカーとして用いられているが,その減少に関する毒性学的意義は不明である。本研究において,まずPBを4週間にわたりF344ラットに強制経口投与したところ,対照群に対して血漿中のALTおよびAST活性は有意に減少したものの,肝臓の過酸化脂質は有意に増加した。RT-PCRの結果,ALTおよびASTの遺伝子発現がPB投与群で有意に抑制されていた。ALTはアラニンをピルビン酸へ転換する働きにより糖新生に関与しており,ASTは解糖―ATP生成におけるアスパラギン酸産生に関与している。これらのことから,PB投与ラット肝臓における糖代謝に関与する遺伝子の発現量を解析したところ,Hif1aFoxo1G6pcが有意に減少していた。さらに,これらの遺伝子発現抑制メカニズムを調べるために,ラット初代培養肝細胞を用い,これらの遺伝子をsiRNAにより発現を抑制し,いくつかの遺伝子の発現変動を検索した。糖新生に関与しているFoxo1に対するsiRNA添加によりFoxo1G6pcに加えALTならびにASTの遺伝子発現は有意に減少した一方,細胞周期に関連するCdkn1bおよびE2f1は有意に増加していた。また,解糖系に関与しているHif1aに対するsiRNA添加によりHif1aFoxo1G6pcに加えALTならびにASTの遺伝子発現が有意に減少していた。以上のことから,PB投与による糖代謝から薬物代謝へのモードシフトにおいて糖代謝に関連する遺伝子の発現抑制が関与していることが示され,併せて,Hif1aFoxo1の上流に位置することが示唆された。Hif1aはその領域にinsulin response elementを複数持つことからその発現抑制にCARが関与していることが考えられるが,今後の検討課題としたい。
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© 2012 日本毒性学会
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