日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-58
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フロン代替化合物1-ブロモプロパンの亜慢性/胎生期曝露によるラットの神経行動学的影響
*上野 晋笛田 由紀子石田尾 徹野中 美希柳原 延章保利 一
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抄録
【目的】1-ブロモプロパン(1BP:CH3CH2CH2Br)は産業現場に導入されている特定フロンの代替化合物の一つであり、主に電子部品洗浄溶剤としての需要が高い。しかしながらその中枢神経毒性についてはいまだ不明な点が多い。本研究では1BPの曝露がもたらす中枢神経学的影響について、成獣ラットを用いた亜慢性曝露モデル、ならびに妊娠ラットを用いた胎生期曝露モデルを作製し、主に神経行動学的表現型から評価するとともに、神経回路の電気生理学的解析についても検討した。【方法】7週齢の雄性Wistar系ラットに1BPを濃度700ppmで6週間(1日6時間、週5日)曝露した亜慢性曝露ラットを作製し、曝露最終日より24時間後にオープンフィールド試験を施行して探索行動量を検討した。また11週齢の妊娠Wistar系ラットに対して妊娠初日から連続20日間1BPを濃度700ppmで吸入曝露し(1日6時間)、出産後得られた雄性仔ラットを胎生期曝露ラットとして、特に若年期を中心にオープンフィールド試験の他、新奇物体探索試験や受動的回避試験によって短期記憶を評価した。また5週齢の海馬スライス標本を用いて長期増強(LTP)についても検討した。【結果と考察】対照ラット(同じ条件で新鮮空気を吸入させたもの)に比べ、亜慢性曝露ラットは探索行動量が有意に増加していた。一方、胎生期曝露ラットにおける探索行動量については4週齢で増加傾向が認められたものの12週齢では減少していた。また5週齢で行ったLTPの解析からは有意な胎生期曝露の影響は認められなかったが、6週齢で試行した新奇物体探索試験および受動的回避試験では、胎生期曝露ラットにおいて短期記憶能の減弱を示唆する結果が得られた。本研究により1BPの曝露は神経行動に影響を及ぼすこと、またこの影響が次世代影響としても出現する可能性があることが示唆された。
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© 2012 日本毒性学会
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