日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-64
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エリスロポエチン産生に及ぼす鉄の2つの効果
*西村 和彦常田 将宏勝山 英明中川 博史松尾 三郎
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抄録
【背景】Erythropoietin(EPO)は貧血や高度上昇等によって低酸素状態になると産生が増加し、赤血球産生を促進する。EPOは造血に必須なだけでなく、種々の組織で細胞保護に関わることが報告されている。鉄は赤血球産生に必須である一方で、EPO産生調節因子のHypoxia inducible factor(HIF)のサブユニットHIF-α分解を促進することでEPO産生を抑制することが知られている。鉄は酸化ストレスを引き起こすことも知られており、酸化ストレスはEPO産生にも影響すると考えられている。本研究は鉄の持つHIF抑制作用と酸化ストレスの2つの作用がEPO産生に及ぼす影響について解析した。【方法】EPO産生能を持つHepG2細胞にFeCl3を添加して24時間培養し、EPO及びHIF-αのmRNA発現量とタンパク量、酸化ストレスの指標としてmalondialdehyde(MDA)量を測定した。【結果】HepG2細胞への鉄添加は100 μMまでは濃度依存的にEPO mRNA発現を抑制したが、200 μM以上では回復し、500 μMでは増加した。 細胞内MDA量は200μM以上の鉄添加で増加した。 100 μM鉄添加によって細胞内HIF-α量は減少したが、鉄キレーターのdeferoxaminを同時添加すると減少せず、低濃度の鉄添加によるEPO産生抑制がHIF-α分解の促進によることが確認された。 500 μM鉄添加はHIF-α mRNA発現を増加させ、細胞内HIF-α量も増加した。 500 μM鉄添加によって増加したEPO産生は抗酸化剤のtempol同時添加によって抑制された。【考察】以上の結果から、鉄が促進するHIF-α分解はEPO産生を抑制するが、鉄濃度の上昇に伴って起こる酸化ストレスの増加はHIF産生を増加させ、HIF-α分解の影響を相殺することでEPO産生が促進されると考えられた。
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© 2012 日本毒性学会
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