日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-66
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ポスター
ヒトiPS細胞由来分化網膜色素上皮細胞を用いた薬剤の毒性評価-1. 継代培養法の確立と分化細胞の性状解析-
*古川 初江篠澤 忠紘高見 健治大塚 博比古
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抄録
【背景及び目的】医薬品開発の創薬スクリーニングや安全性評価において、網膜色素上皮細胞(RPE)に対する薬物の作用の研究は、大量の細胞が準備し易い株化細胞のARPE-19が広く利用されており、最近ではヒト初代RPEが入手可能になってきた。しかしながら、ARPE-19は形質がヒト初代RPEと異なり、ヒト初代RPEは高価でかつ大量の細胞を準備することが困難などの問題があった。今回、ヒト人工多能性幹細胞(iPS 細胞)由来RPEを上記目的に利用するため、その効率的な培養方法及び細胞の特徴について検討した。
 【方法及び結果】培養方法:胚様体を無血清培地で浮遊培養しサイトカインを添加することにより、ヒトiPS細胞由来RPEを作製した。さらに、ヒト胎児RPE培養液を用い、継代培養法に工夫を加えることにより、ヒトiPS細胞由来RPEを大量に増殖させる方法を確立した。細胞の特徴:本方法で得られたヒトiPS細胞由来RPEは、継代の有無に拘わらず、ヒト初代RPEと同様に敷石状の形態やメラニン様色素を保持し、RPE関連タンパクであるZO-1及びBESTROPHINの分布を認めた。また、ヒトiPS細胞由来RPEのBESTROPHIN、RPE65、MITF及びMERTKの遺伝子発現レベルは、ARPE-19と比べていずれも高かった。さらに、継代後のヒトiPS細胞由来RPEにおけるこれらの遺伝子発現レベルは、未継代のヒトiPS細胞由来RPEに比べ、よりヒト初代RPEに類似していた。
 【結論】本継代培養法により、ヒト初代RPEに類似した遺伝子発現レベルを示すヒトiPS細胞由来RPEを従来法より大量に作製可能となり、創薬スクリーニング及び安全性評価に利用できる可能性が示めされた。
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© 2012 日本毒性学会
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