日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-2
会議情報

再生医療とその評価
再生医療/細胞・組織加工製品の安全性評価
*佐藤 陽治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

総合科学技術会議基本政策推進専門調査会(平成20年5月)『再生ロードマップ』によれば、「再生医療」は「損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療」と定義されている。すなわち、「再生」を目的とした医療の総称であり、その手段には大きく分けて、①薬剤等で自己再生能力を活性化する方法、②脱細胞組織や合成足場材料を用いる方法、③生きた細胞や組織を用いる方法、および④これらを組み合わせた方法がある。手段の違いによって医療上のリスクのプロファイルが異なるため、「再生医療の安全性」を考える場合には、目的へのアプローチの手段別に分けて考える必要がある。「①薬剤等で自己再生能力を活性化する方法」の安全性は医薬品(あるいは生物製剤)としての安全性の問題であり、「②脱細胞組織や合成足場材料を用いる方法」については医療機器としての問題となる。「③生きた細胞や組織を用いる方法」については、細胞・組織の加工の程度が最小限の場合、あるいは十分な経験がある方法による場合には移植医療(または輸血)と見なされるが、一定以上の加工(培養・活性化・分化誘導など)が施される場合には「細胞・組織加工製品」と呼ばれ、その主な作用様式が細胞・組織の薬理的・代謝的・免疫学的機能による場合には医薬品として、細胞・組織の物理的・構造的機能による場合には医療機器として安全性を考える必要がある。細胞・組織加工製品は多様性が高く、リスクの内容や重大性、品質評価・管理のポイントは、細胞の生物学的特性と由来、製造工程、非細胞成分、最終製品の態様および臨床における製品の具体的な使用方法などに大きく左右される。従って、細胞・組織加工製品の品質・安全性の確保は、多様なリスクファクターを考慮したリスクベースアプローチによってケースバイケースで考えることが原則となる。

著者関連情報
© 2012 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top