抄録
WTOのSPS協定において、食品安全に関わる国際規格基準作成機関と位置づけられているCodex委員会の下部組織の一つに残留農薬部会がある。この部会の主要な任務は、食品中の最大残留農薬基準の設定と、そのためのサンプリング・分析法を決定すること等である。食品が基準に整合しているかを決定するためには、サンプルを抽出し分析する。多くの場合、コンポジットサンプルを分析するが、コンポジットを構成するユニットの残留農薬濃度は一定ではないため、コンポジットサンプルの分析結果を超える濃度で残留農薬を含むユニットも存在する可能性がある。このことは、コンポジットサンプルが基準に整合していても、基準を超える残留農薬濃度の食品を摂取する可能性があること、その農薬が急性毒性を持つ場合、健康影響を検討する必要があることなどを示唆し、Joint FAO/WHO Meeting on Pesticides (JMPR)による急性参照用量の設定および短期経口曝露評価につながった。急性参照用量は、JMPRが多くの農薬に設定しているが、Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives(JECFA)もいくつかの動物薬(注射部位に関連)およびDONなどの汚染物質について設定している。短期経口曝露評価の検討は、1995年に開催されたJoint FAO/WHO Consultation on Predicting Dietary Intake of Pesticide Residuesに始まる。いくつかのConsultationと多くの改善を経て、現在の短期経口曝露評価方法が使われている。最悪の摂取シナリオを想定しており、各々の食品について、1ユニットの重さ、摂取調査における97.5パーセンタイル摂取値(摂食者のみの97.5パーセンタイル)、摂食者の平均体重、基準に基づく規制下における最大残留濃度等を用いて算定され、各々の基準が妥当なものかどうかの指標とされている。ユニットの重さが25 g未満の場合、ユニットの重さが25 g以上かつ97.5パーセンタイル摂取値以上または以下、バルクまたはブレンドの場合の4つにケース分けされている。