日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-1
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慢性毒性試験結果からの発がん性予測
医薬品のラットにおけるがん原性陰性の予測性に関するデータ調査
*久田 茂澤田 繁樹工藤 哲和藤 英司熊澤 俊彦森山 賢二三島 雅之笠原 義典鬼頭 耀子井上 健司青木 豊彦中村 和市
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抄録
米国研究製薬工業協会(PhRMA)は過去30年間に試験が実施された182医薬品について、がん原性試験、ラット慢性毒性試験及び遺伝毒性試験等のデータを加盟企業から収集して解析した。その結果、遺伝毒性、ホルモン作用(内分泌系器官やホルモン濃度の変化)、ラット慢性毒性試験における肥大/過形成あるいは前がん病変のいずれも陰性であれば(NEGCARCRat基準)、ラットがん原性が陰性である比率が82%と高く、この基準を満たすがラットがん原性が陽性の14化合物(False Negative、FN)ではこれらの結果のヒトへの外挿性が低いとされた。さらに、日本製薬工業協会は64化合物、米国食品医薬品局は51化合物について同一の調査を実施し、PhRMAと同様の結果が得られた。一方、NEGCARCRat基準の問題として、第一に肥大/増殖性病変を部位に係わらず腫瘍発生予測の指標とするwhole-body approachが挙げられる。しかし、発がん標的組織に肥大/過形成が見られなかったケースでも、遺伝毒性のみ陽性の化合物を除いて、薬理あるいは毒性作用により腫瘍発生機序の説明が可能であり、whole body approachの必要性はなかった。また、既知の非遺伝毒性発がん機序により、多くの場合に発がん標的組織において過形成等の組織変化が誘発されると考えられる。第2の問題は偽陰性(FN)化合物の存在であるが、薬理作用に起因する発がんを考慮するとFN化合物の数が減少することから、残されたFN化合物の毒性学的意義が重要になる。第3の問題はNEGCARCRat基準では遺伝毒性コアバッテリー試験の一つ以上が陽性の場合にがん原性試験を必要とする点が、遺伝毒性の総合的評価と矛盾することである。ICH S1がん原性試験ガイドライン改定の専門家作業部会ではさらなるデータ解析を行い、薬理作用及びNEG CARC Rat基準等によるがん原性陽性及び陰性の総合的な予測及び実施価値のないがん原性試験を省略する基準等について議論される。
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© 2012 日本毒性学会
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