日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-2
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慢性毒性試験結果からの発がん性予測
ICHS1の最新動向
*西川 秋佳野中 瑞穂小川 久美子
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抄録
発がん性は最重篤な毒性の一つであり、現行の医薬品試験法ガイドラインでは1種のげっ歯類を用いる長期がん原性試が必須となっている。しかし、最近の調査では、慢性毒性試験で過形成、肥大等のがん関連病変がなく、遺伝毒性陰性で、ホルモン活性のない医薬品はラット2年間試験で発がん性を示さない可能性が高いとの成績がある。一方、薬理作用から発がん性を凡そ予測できるとする解析結果もある。このような特定の要件を満たせば、ラット2年間試験を省略できるとする理念に基づき、ICHS1の改定をめざす動きが正式に始まりそうである。ラット2年間試験を省略する場合には、安全性を担保するための追加試験なども具体的に検討する必要があり、発がん性試験の要件に関するS1Aだけでなく、試験方法に関するS1Bの改定も必要となるため、改定するガイドラインはS1となる可能性が高い。6月の福岡での専門家会合で下記の点について議論すべきとされている。(1) 薬理作用の情報を発がん性の予測に活用する方策及びそれを確認するための追加の解析方法、(2) 毒性学的判定基準(慢性毒性試験で発がん関連病変なし、遺伝毒性陰性及びホルモン作用なし)や薬理学的なoff-targetの判定基準を発がん性の予測に活用する方策、(3) ラット2年間試験を省略する場合、安全性を担保するために必要とされる追加の情報、(4) げっ歯類の慢性毒性試験では検出されず、ラット2年間試験のみで検出される非腫瘍性病変のヒトへの外挿性評価及びそれが影響する試験法の運用、(5) 医薬品開発の過程においてがん原性試験成績が重要視されるタイミングに関する製薬企業と規制当局間での調整、(6) 新たながん原性試験の方策が決定された場合、プロスペクティブな評価の必要性。シンポジウムでは、福岡会合での進捗を報告するとともに、当面の課題と克服すべき点について議論したい。
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© 2012 日本毒性学会
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