日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-135
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一般演題 ポスター
リンパ球サブセット検査を用いたラットTDAR法試験における免疫系細胞の解析
*後藤  玄杉本 潤一郎岡室 彰藤澤 賢一宝里 英和安田 祐弥望月 雅裕大石 巧
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抄録
【目的】免疫毒性試験ガイドライン(ICH:S8)では,標準的毒性試験の結果から免疫系への影響が懸念された場合,免疫機能検査を中心とした追加の免疫毒性試験が必要とされており,標的が特定されていない場合,TDAR法が推奨されている。また,リンパ球サブセット検査は免疫系細胞の変動を捉えることができ,免疫機能の評価に有用な情報をもたらすことが期待される。今回,ラットのTDAR法試験とともにリンパ球サブセット検査を行うことにより,抗体産生能の変化とそれに伴う免疫系細胞の変動の評価を試みた。【方法】免疫抑制剤シクロスポリンA(CysA)を0及び15 mg/kg/dayの用量で6週齢のSDラットに4週間反復経口投与した。投与14及び23日にT細胞依存性抗原のKLH(スカシガイ由来ヘモシアニン)を尾静脈内に投与し,投与20日と29日に頸静脈採血し,ELISA法により抗KLH抗体の測定を行った。更に,投与29日に胸腺及び脾臓を採取し,フローサイトメトリー法により末梢血,胸腺及び脾臓のリンパ球サブセット検査を行った。【結果】CysA投与群では投与20日にIgM抗体の低値,投与29日にIgM及びIgG抗体の低値が確認され,その値は雄より雌で高値傾向がみられた。リンパ球サブセットではCysA投与群において末梢血及び脾臓のT細胞の低値を示し,胸腺ではCD4陽性T細胞の低下が顕著に認められた。【考察】TDAR法ではCysAによる抗体産生能の抑制効果を定量的に検出することが可能であった。リンパ球サブセット検査では末梢血及び脾臓でT細胞,胸腺でCD4陽性T細胞の変動が検出され,抗体産生能の抑制はこれらの細胞集団の変動によるものと考えられた。以上の結果から,TDAR法試験と同時にリンパ球サブセット検査を行うことは,抗体産生能の評価に詳細な知見を提供しうると考えられた。今後は,TDAR法の抗体測定で性差が認められたことから,他種免疫抑制剤を用いて免疫機能の性差の検討などを進める予定である。
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© 2013 日本毒性学会
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