抄録
<目的>
白金には感作性があることが知られており,白金塩のLocal Lymph Node Assay(LLNA)では陽性結果が報告されている。一方,我々はこれまでに粒子径の異なるナノ白金を用いた28日間経皮毒性試験において,発現までに2週間を要する皮膚炎を観察していることから,このナノ白金を用いてLLNAを実施し,感作性の有無について検討した。
<方法>
1250,2500および5000 ppmの粒経1 nm以下のナノ白金(Pt1)または粒経20 nm前後のナノ白金(Pt20)を雌のCBA/J 系雌マウスに3日間塗布した。最終塗布後3日に耳介リンパ節を摘出して放射活性を測定し,Stimulation Index(SI)を算出した他,皮膚刺激性を確認するため,耳パンチ重量測定法により耳介重量を測定した。
<結果および考察>
1250,2500および5000 ppmのPt1塗布では,SIは3.9,9.5および20.3となり,全ての濃度で陽性基準である3を上回り,EC3は1212 ppmとなった。1250,2500および5000 ppmのPt20塗布では,SIは1.2,0.8および1.6となり,いずれの濃度でも陽性基準を下回った。また,耳介重量は2500および5000 ppmのPt1塗布で増加する傾向にあり,Pt1の刺激性が示唆された。今回,Pt1では陽性反応とともに刺激性が観察されたことから,陽性結果は,刺激性による偽陽性の可能性もある。しかし,刺激性が検出されなかった1250 ppmの濃度でも陽性反応が得られたことから,Pt1は感作性を有すると考えられた。Pt20はいずれの濃度でもSIが陽性基準を下回り,感作性陰性であった。以上,今回のLLNAの結果からは,ナノ白金を用いた28日間経皮毒性試験で認められた皮膚炎は刺激性および感作性による複合的な変化である可能性が考えられた。