抄録
【目的】現在までに,金属元素を中心に有する種々ハイブリット分子が合成されている。これらハイブリット分子の利用は,ある種の生物活性・薬理活性を指標とするハイスループットアプリケーションを用いる創薬のシード化合物探索へと展開されている。本研究グループでは,亜鉛を中心に有するハイブリット分子ライブラリーを用い,毒性学的観点からスクリーニングを始め,骨芽細胞の活性化に寄与するハイブリット分子の同定を進めている。本発表では,ハイブリット分子の毒性情報と生物活性について,ビピリジン亜鉛錯体及びフェナントロリン骨格を有する亜鉛錯体2種を中心に,以下に示すin vitroでの研究成果とin vivoでの研究成果(現在進行中)について紹介する。【方法】ハイブリット分子の毒性情報は,WST-1解析及びマウスリンフォーマTK試験により評価した。生物活性は,骨芽細胞のALP活性を指標に評価した。また亜鉛蛍光プローブを用い,細胞内への亜鉛ハイブリット分子の取込みを,共焦点走査型レーザー顕微鏡で観察した。【結果・考察】複数の亜鉛ハイブリット分子を毒性情報に基づき分類するため,0.1, 1, 10 mM処置による細胞生存率が80%以上となり,変異原性を示さない最大濃度を決定した。次に,最大濃度の異なるNo.19,No.17,No. 34を無作為に選出し,骨芽細胞活性化への生物活性をスクリーニングした。本解析は,間葉系細胞のST2株を用い,BMP2(骨形成タンパク質)による骨芽細胞への分化誘導条件での亜鉛ハイブリット分子によるALP活性への影響を評価した。その結果,ST2細胞のALP活性は,BMP2単独と比較しNo. 19共処置で約1/2倍,No. 17共処置で約4倍,No. 34共処置で約6倍となった。一方,これら3種は,細胞内で亜鉛として認識されていることが亜鉛蛍光プローブを用いる取込み解析により確認された。