抄録
食品添加物のアレルギー性のリスク評価に関しては,食品安全委員会の添加物に関する食品健康影響評価指針(http://www.fsc.go.jp/senmon/tenkabutu/ tenkabutu-hyouka-shishin.pdf)平成22年5月作成)の2-2-2-(7) アレルゲン性試験の項目が参考になると思われる。ただ,化学物質を経口的に摂取した場合のアレルギー誘発能を予測する方法は十分に確立されていないのが現状で,特に即時型アレルギーの誘発性を予測する方法は未確立であるため,通常遅延型アレルギーを指標とするアレルゲン性試験が用いられる。すなわち,モルモットを用いた皮膚感作性試験(OECDテストガイドライン406のうちマキシミゼーション試験(GPMT))又はマウスを用いたリンパ節反応試験(例:OECDテストガイドライン429(局所リンパ節試験(LLNA))を利用することが多い。なお,LLNA試験は,局所リンパ節の増殖性を引き起こす化学物質の濃度から,感作性の強度を4段階で評価できる方法である。次いで,タンパク質を構成成分とする添加物のアレルゲン性の評価については,「遺伝子組換え食品(微生物)の安全性評価性基準(平成20年6月26日食品安全委員会決定)」に準じて行われる。また,酵素についてのアレルゲン性評価も同様に行われる。この基準の中では,(i) 当該タンパク質のアレルギー誘発性の報告の有無,(ii)既知アレルゲンとの構造相同性の有無,(iii)物理化学的処理に対する感受性について等の項目で,アレルギー誘発性についての予測がなされる。なお,不純物としてのタンパク質成分が,アレルギー誘発性を持つ場合もあるので,注意が必要である。最後に,既存のまた市販後の食品添加物のアレルギー発症事例について継続的な疫学的調査も重要で,その頻度について知るためにも添加物の正確な表示も重要と思われる。