医療情報学
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原著
病院情報システムのデータウェアハウスによる糖尿病疫学調査の評価
佐野 晃一松村 泰志桑田 成規揚 振君戸田 良幸武田 裕
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2001 年 21 巻 2 号 p. 161-171

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抄録

 病院情報システムに蓄積された診療データを利用した疫学調査の利点,問題点を明らかにするために,糖尿病の実態調査を例として,大阪大学医学部附属病院のデータウェアハウスを利用した調査と,厚生省糖尿病実態調査の結果を比較した.その結果,一定以上の重症度の患者群におけるHbA1C値分布はほぼ一致すること,年齢分布は,大学病院の調査でやや若年側にシフトすること,疾患の男女比は,むしろ実態調査にバイアスがかかっていること,各疾患の合併率は,大学病院調査の方が実態をより正確に反映していること,疾患に対する治療の選択比率は,大学病院でより高度の管理が必要な治療の選択比率が高くなることが明らかとなった.また,病院データを用いて,HbA1C値の1年後の変化に対する重症度,年齢,治療内容の影響を調べた.病院データを利用した疫学調査は,population baseの調査と比較して,バイアスがかかる部分,より正確に実態が把握できる部分があること,患者の推移を調査する等の調査に有利であること,さらに,圧倒的に少ない労力と経費で実行できることより,有益な方法と考えられる.

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© 2001 一般社団法人 日本医療情報学会
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