日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-6
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優秀研究発表 ポスター
1,2-ジクロロプロパンと重合開始剤の同時曝露は細胞傷害を増強する
*河崎 陽一八木 健太坪井 千明正岡 康幸江角 悟北村 佳久千堂 年昭
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抄録
【目的】近年,印刷会社の従業員が胆のうがんを発症し話題となった。その発症原因物質は,ジクロロメタン(DCM)および1,2-ジクロロプロパン(DCP)とされている。我々は,以前の研究において,インクに含有する重合開始剤がヒト末梢血単核球を死滅させることを突き止めた。すなわち,印刷会社特異的な材料であるインクも細胞傷害に関与していることが推察される。そこで今回,DCMおよびDCPの細胞傷害性に対する重合開始剤の相加・相乗効果について検討した。
【方法】細胞毒性試験は,MTT assayで評価した。96穴プレートにヒト胎児正常肺細胞(MRC-5)を1×105 cells/well播種し,対象薬剤を添加後5%CO2,37°Cで24時間培養した。その後,MTT溶液を加え3時間培養した。吸光度は,マイクロプレートリーダーを用いた。また,細胞死の形態観察は,フローサイトメーターを用いた。6穴プレートに細胞液(1×103 cells/cm2)と対象薬剤を添加し,5%CO2,37°Cで24時間培養した。その後Annexin VおよびPropidium Iodideを添加し,室温にて15分間反応させた後,FACSCalliburを用いて細胞数を計測した。
【結果および考察】10-50 mMのDCP単独曝露において,有意な細胞生存率の低下を認めた。一方,DCM単独曝露では細胞死を認めなかった。また,DCPと2,2-DMPAP, 1-HCHPK, MBBあるいはMTMPの同時曝露では,相加・相乗効果を認めた。一方,DCPと2-EHDABあるいは2-ITXの同時曝露では,相加・相乗効果は認められなかった。さらに,同時曝露により,アポトーシス細胞の有意な増加を認めた。本成果は,印刷会社特異的に発症した胆のうがんの原因究明の一助になると考える。
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© 2014 日本毒性学会
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