日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W10-4
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ワークショップ 10 眼科異常を共有するトランスレーショナル手法
動物におけるERG、全視野からから局所まで
*伊藤 典彦
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抄録
 網膜電図検査は網膜の機能異常を電気生理学的に検出する。解剖学的には異常がないように見える網膜の機能異常を検出することができる。現在、網膜への様々な刺激方法が選択できる。従来からある全視野刺激に加えて網膜局所を刺激する装置も登場した。網膜局所への刺激方法も多局所を連続して刺激する方法に加えて眼底を観察し狙った場所を刺激することもできるようになった。これらの装置の登場で局所的な網膜の機能異常を検出することが可能となった。また、多局所を刺激する検査としては緑内障の病態解明や治療薬開発のために局所的な網膜神経節細胞の異常を検出できる多局所視覚誘発電位検査も開発されている。
 多局所や局所を刺激する検査が従来の全視野を刺激する検査に代わる検査であるという誤解がある。多局所を刺激する検査のほとんどは錐体機能の検査である。多局所を刺激する検査では相反する命題にも直面する。測定中の固視が大切であるが固視を維持するための麻酔ではその深度が測定値に影響を及ぼす。
 実験動物種間の解剖学的な相違、機能的な相違が毒性検出の障害になる場合もある。眼毒性試験に用いられる実験動物の多くが人と異なる視覚器を有する。3色型色覚ではない、杆体が優位、そして黄斑を持たない、等である。緑内障治療薬の第一選択薬となっているプロスタグランジン関連薬では人にはみられない強い縮瞳が犬や猫には見られる。強い縮瞳は検査の障害となり網膜の機能異常を検出することはできない。
 局所の網膜電図検査に加えて従来からある全視野刺激の検査まで広げそれぞれの方法を紹介する。各検査法の実験動物を対象とした眼毒性試験の利点と欠点、限界を挙げる。さらに毒性試験に用いられる各種実験動物の網膜の解剖学的、機能的な相違にも触れたい。見る機能への毒性の本質を捉えるために方法と動物の選択は議論されなくてはならない。その議論のための題材を提供する。
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© 2014 日本毒性学会
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