日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W10-3
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ワークショップ 10 眼科異常を共有するトランスレーショナル手法
OCTを利用した形態学的変化のモニタリング
*廣田 里香
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抄録
眼毒性リスクは、薬理学的作用から明らかに眼が標的器官となる場合を除いて、多くはげっ歯類あるいは非げっ歯類を用いた反復投与毒性試験における眼科学的検査や病理組織学的検査によって検出されるが、臨床試験で初めて眼毒性が明らかになるケースも皆無ではない。網膜は視覚情報処理のために重要な役割を果たしているが、その再生能力は極めて限定的である。従って、その毒性リスクを組織イメージング等の新しい診断技術を用いて非臨床試験でより精密に評価することは、臨床試験における網膜毒性リスクを回避する上で極めて重要である。
光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)は、光の干渉原理を用いて非侵襲的に生体において組織断層像を得る。異なる深さからの反射光を一度に処理できるフーリエ方式のSD-OCTが開発されたことにより処理速度と解像度(縦方向約5 µm, 横方向約11 µm)が格段に向上し、医学領域では網膜の精密な形態学的診断法の一つとして急速に普及している。最近では、医薬品の臨床試験においても、網膜毒性リスクを詳細に評価するためOCTによるモニタリングが組み入れられることもある。
弊社では、translational scienceの観点から、非臨床毒性試験に用いられるラット、ウサギ、イヌ、カニクイザルについて網膜や脈絡膜を対象とする後眼部OCTの適用可否を検討するとともに、正常動物あるいは自然発生性所見の網膜断層像の描出を試みた。また、網膜に病理組織学的変化を惹起することが知られている薬剤を用い、網膜各層の形態学的変化を検出可能か否か検討して良好な結果を得た。これらの経験を紹介するとともに、非臨床毒性試験にOCT検査を組み入れる際の留意点等について報告する。
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© 2014 日本毒性学会
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