日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W4-3
会議情報

ワークショップ 4 医薬品のがん原性評価に対する新たなアプローチ
質量分析機器を用いたDNA付加体の網羅的解析により発がんに関わるDNA付加体を探索する
*戸塚 ゆ加里中釜 斉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
がんの発生には環境因子が大きく係っていることが良く知られている。環境中の変異原・がん原物質が生体内に取り込まれ、細胞内に侵入し、核内のDNAに結合する。これらを総称してDNA付加体と呼び、これらDNA付加体がゲノムに変異を誘発する基であると考えられている。最近では、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析により、様々ながんで特徴的な変異パターンが存在することも明らかになりつつある。従って、がん化に直結するようなDNA付加体の解明が個人レベルの有効なリスク評価に繋がると考えられる。これまでのDNA付加体解析は、化学構造が同定されている付加体が中心であった。しかし、実際には、構造が同定されていない付加体が生体内に多数存在し、これらがヒト発がんに関与する可能性も十分に考えられる。我々はLC-TOF-MSによる総イオン分析を基にして、ヌクレオシドに特徴的な-116.047 Daの開裂損失を起こす化合物を網羅的に検出する方法を確立した(DNAアダクトーム法)。この手法を用い、マグネタイトナノ粒子を気管内投与したマウス肺の解析を行なった。マグネタイトナノ粒子はマウス肺にG:C->A:T及びG:C->T:A変異を顕著に誘発したが、付加体の網羅解析の結果、これら遺伝子変異の基となる付加体を含む複数の付加体を観察することが出来た。また、このマウス肺に観察された付加体の多くは炎症由来のDNA付加体であったことから、マグネタイトナノ粒子は炎症を介して変異を誘発することが示唆された。現在、同手法を用い、中国で多発する食道がんの要因解明を試みている。本手法により、個々人のDNA修飾の全容を質的及び量的に解明できれば、発がんの要因解明やリスク評価等への応用が可能になるものと期待される。
著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top