日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-1
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一般演題 口演
ナノマテリアルの雄親曝露による次世代影響評価
*難波 佑貴吉岡 靖雄森下 裕貴瀧村 優也清水 雄貴吾郷 由希夫田熊 一敞松田 敏夫東阪 和馬堤 康央
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抄録
生活習慣や化学物質曝露といった環境要因は、遺伝的要因と合わせ、我々の健康を左右する原因となる。また、親が受けた環境要因による生体影響は、次世代にまで影響を与えることも明らかとなっている。従来は、胎児や乳児と、より密接に関わる母親に着目した次世代影響研究が多くなされてきた。一方で、近年の疫学研究・動物実験により、遺伝的要因によらない父親を介した次世代影響の存在も考察されている。しかし、父親を介した次世代影響に関する情報は未だ乏しく、更なる情報の集積が喫緊の課題となっている。本観点から我々は、開発・実用化が進展しているナノマテリアルを用い、雄親曝露に着目した次世代影響評価研究を推進している。特に、非晶質ナノシリカが、生殖細胞の核内にまで移行し得ることを認めており、雄親を介した次世代影響評価の重要性を見出しつつある。そこで本発表では、粒子径30 nmの非晶質ナノシリカ(nSP30)を用い、雄親を介した次世代影響について基礎情報の収集を試みた。BALB/cマウス(10週齢、雄性)に、nSP30を1日おきに計4回尾静脈内に投与した。投与開始から35日後に、無処置のBALB/cマウス(10週齢、雌性)と交配させた。生まれた仔に関して、成長への影響や情動認知機能への影響など、多面的に解析した。その結果、過剰量投与によるハザード同定ではあるものの、高架式十字迷路試験により、雄親にnSP30を投与した群で、不安様行動の有意な低下が認められた。この現象を分子レベルで評価するために、HPLCにより海馬中のモノアミン含量を解析した。その結果、不安と深く関わるセロトニンをはじめ、モノアミン量には群間で変化は認められなかった。これらの結果から、nSP30の雄親曝露が次世代の情動機能に影響を与える可能性が示された。現在、雄親のnSP30曝露が仔の不安におよぼす影響に着目し、より詳細な分子レベルでの変動解析を通じ、不安様行動低下のメカニズム解明を進めている。
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© 2015 日本毒性学会
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