抄録
【背景と目的】マイクロミニピッグ(以下MMP)は6ヵ月齢時の体重が約10kgと非常に小型であることから、試験研究等での使用が近年増加している。しかしながら、MMPの組織学的特徴に関する詳細な報告は少ない。そこで本研究ではMMPの精巣に着目し、精子形成サイクルやその月齢別推移等を調べることで、精子形成の組織学的な成熟時期を明らかにすることを目的とした。【方法】3、4.5、6、8.5および12ヵ月齢のMMPの精巣についてFSA固定を行い、常法に従いパラフィン包埋切片を作製した。染色はHE染色およびPAS染色を実施した。精子形成サイクルは、HE染色を用いたtubular morphology systemおよびPAS染色を用いたacrosomic systemの二種類の方法によりステージ分類を実施し、その差異を比較した。また、acrosomic systemの分類に先立ち、精子細胞のPAS染色陽性部位から精子発生のステップ分けを既報に従い行った。続いて、ステージ分けされた精細管数を測定し、ステージごとの比率を月齢別に算出した。【結果および考察】精子形成サイクルはtubular morphology systemでは8ステージに分けられた。精子発生の過程には15ステップが認められたが、ステップ後期の精子細胞とステップ前期の精子細胞は併存することから、acrosomic systemによる精子形成サイクルは11ステージに分けられた。両分類方法によるステージ数の差異は主に円形精子細胞の細分類化によるものであった。月齢別にみたステージ比率は、両分類方法とも3ヵ月齢時で精子発生の若い段階であるステージⅠが他の月齢と比べ1.5~2倍程度高率に観察された。4.5ヵ月齢以降では月齢によるステージ比率に大きな差はみられなかった。また、3ヵ月齢では菲薄な精上皮が散見され、3ヵ月齢と4.5ヵ月齢では精子細胞の分裂不全とされる多核細胞が認められたが、6ヵ月以降ではほとんど観察されなかった。以上より、ステージ比率の安定化と異常所見の有無から、MMPの精子形成は4.5ヵ月齢頃までは発達段階にあり、6ヵ月齢頃に成熟に達することが示唆された。