日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-18
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一般演題 口演
クロルプロマジンの妊娠ラットにおける投与時期の違いによる胎盤病変比較
*古川 賢辻 菜穂林 清吾阿部 正義山岸 由和黒田 雄介萩尾 宗一郎杉山 晶彦
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抄録
【目的】クロルプロマジン(CP)のラット胎盤発生に対する投与時期の影響を経時的に検索した。【材料及び方法】試験にはWistar Hannover妊娠ラット96匹を供試した。CPは生理食塩水に溶解・希釈し、0及び100mg/kgの用量にて妊娠11、13ないし15日のいずれかに単回腹腔内投与した。妊娠11日投与群(GD11群)では妊娠12、13、15、17及び21日、妊娠13日投与群(GD13群)では妊娠14、15、16、17及び21日に、妊娠15日投与群(GD15群)では妊娠16、17及び21日に剖検し、胎盤及び胚子/胎児を摘出し、重量測定後、胎盤の組織病理学検査を実施した。【結果】母動物は全CP投与群において自発運動減、低体温、尿失禁など一般状態不良を示し、体重減少が認められた。妊娠21日の胎児死亡率はGD11群で40%、GD13群で20%及びGD15群で17%であった。胎児・胎盤重量は全CP投与群で減少していた。胎児重量の減少の程度はGD15群>GD13群>GD11群であったが、胎盤重量の減少の程度は投与時期とは無関係で、ほぼ一律に減少していた。組織病理学的には、迷路層及び間膜腺においてアポトーシスが全CP投与群で投与後1、2日にて増加し、これにより迷路層及び間膜腺は菲薄化していた。細胞増殖活性には著変は認められなかった。基底層においてアポトーシスはGD11群で投与後1、2日、GD13群及びGD15群で投与後1日にて増加していた。細胞増殖活性の減少はGD11群において投与後2日でのみ認められた。基底層は妊娠15日まで菲薄化していたが、妊娠17日以降はグリコーゲン細胞の残存及び嚢胞変性により肥厚していた。胎盤病変及びその進行過程についてはCP投与群間で著変は認められなかった。【結論】CPを妊娠11、13ないし15日のラットに単回投与することで、アポトーシスにより迷路層及び間膜腺では低形成、基底層ではグリコーゲン細胞の残存による嚢胞変性が誘発され、投与時期により病変の差は認められなかった。胎盤病変の感受期は抗がん剤では細胞増殖時期と密接に関連しているものの、CPでは特定の感受期はなく、アポトーシスにより非特異的に胎盤の発育が一過性に阻害されるものと推察した。さらに、胎児毒性は胎盤障害の2次的変化ではなく、CPの直接作用に起因したものと推察した。
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© 2015 日本毒性学会
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