日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-26
会議情報

一般演題 口演
ミリオーダー径のスフェロイドが作製できる単層培養細胞の自己組織化剤(CAT)の開発と創薬試験用途としての可能性検討
*岩井 良輔根本 泰中山 泰秀
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】培養細胞を用いた創薬試験において,単層培養細胞と立体構造を有する生体内細胞の間で薬剤感受性が異なることが問題視され,スフェロイド培養が注目されている.一方,スフェロイド作製は操作が煩雑で,細胞数の統一や形成後の回収が困難であるなど課題も多い.我々は単層培養細胞へ外部から刺激を加えることなく自己組織化させてスフェロイド形成させることができる培養皿の表面コート剤(CAT)を開発し,再生医療への応用を目指している.本研究ではCAT表面でのスフェロイド作製とそのサイズ調整を行い,創薬試験用途としての可能性を検討した.
【方法と結果】培養プレートは市販のPSt製96,48,24,12,6ウェルプレートを用いた.培養面へCAT水溶液を滴下して37℃で3時間インキュベートした後,培養面積に合わせて5,10,20,100,250×104個に調整したラット間葉系幹細胞を播種した.細胞は接着して単層コンフルエント層を一旦形成した後,約10時間内に培養皿の周縁から剥離しながら中心へ凝集し,最終的に1個のスフェロイドを自己形成した.スフェロイドは培養面に再接着することなく培地中に安定して浮遊し,培養面に細胞は残存しなかった.得られたスフェロイド゙のサイズは,培養皿と播種細胞数に相関し直径0.3~2.5 mmであった.免疫染色すると,細胞外マトリクスと増殖因子の発現も確認された.直径2.5 mmサイズでも24時間内には壊死は起こらず,48時間後から低酸素(HIF-1α陽性)領域,72時間後から壊死層を認めた.
【結論】培養面へCAT水溶液を滴下して細胞を播種するだけの簡便操作でmm単位の間葉系幹細胞のスフェロイドを1日以内に作製して回収することができた.ウェル毎に1個のスフェロイドが形成され,そのサイズは細胞数(ウェル面積)で制御可能であった.CATは,創薬試験用スフェロイド゙の作製技術として極めて有望と言える.
著者関連情報
© 2015 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top