日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-178
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一般演題 ポスター
妊娠期ヒ素曝露によるC3Hマウス孫世代の肝腫瘍増加に関与するDNAメチル化変化のRRBS法による探索
*岡村 和幸中林 一彦堀部 悠河合 智子鈴木 武博秦 健一郎野原 恵子
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抄録
天然に存在する無機ヒ素の慢性中毒が発がんを引き起こすことが知られているが、その機序としてエピジェネティクスの関与が疑われている。我々はこれまでに、無機ヒ素を妊娠中のC3Hマウス (F0) にのみ一過的に投与することにより、孫世代 (F2) の雄で成長後に肝腫瘍が増加することを明らかにした。F2での肝腫瘍増加にエピジェネティック変化が関与すると考え、本研究ではF2肝臓においてReduced Representation Bisulfite Sequence (RRBS) 法によるゲノムワイドなDNAメチル化解析を行った。
対照群F2正常肝組織 (CCN)、肝腫瘍組織 (CCTt)、および妊娠期ヒ素曝露群F2の肝腫瘍組織 (AATt)、各群3検体からDNAを抽出し、RRBSライブラリーを作製後、次世代シークエンスを行った。その後、マッピングツールであるtrim-galoreを用いてアダプターの除去などを行い、methylKit、edmr、bedtoolsを使用し解析を行った。
その結果、differential methylated cytosine (DMC) が、q値0.01未満かつメチル化変化25%以上の条件で、CCN群とCCTt群の比較で34374か所、CCN群とAATt群の比較で19082か所、CCTt群とAATt群の比較で10291か所検出された。特に、CCTt群およびAATt群ではCCN群と比較して低メチル化DMCが数多く検出され、腫瘍組織ではグローバルな低メチル化がおこることが示唆された。次にDMCを基にdifferential methylation region (DMR) を抽出し、DMRに対し遺伝子アノテーションを付加した。本解析の結果、転写開始点前後2000 bpの領域では、CCN群と比較してCCTt群で変化が観察された領域と、CCTt群と比較してAATt群で変化が観察された領域は共通しないものが多かった。このことから妊娠期のヒ素曝露は、対照群の腫瘍形成の際におこる変化を増強するのではなく、別経路の変化を付加することで腫瘍を増加させる可能性が示された。
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© 2015 日本毒性学会
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