日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-187
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一般演題 ポスター
血管傷害後内膜肥厚形成段階の血管平滑筋細胞アポトーシスにおけるKeap1/Nrf2システムの役割
*芦野 隆山本 雅之沼澤 聡
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抄録
酸化ストレスは、血管内膜傷害後に血管平滑筋細胞(VSMC)の異常増殖および遊走を引き起こし、動脈硬化の原因となることが示唆されている。通常、生体は血管機能を維持するために、修復段階に産生される活性酸素種(ROS)を制御することでVSMCの遊走および増殖とアポトーシスを厳密に調節し、内膜肥厚を抑制していると考えられている。Keap1/Nrf2システムは、酸化ストレス応答において中心的な役割を担っており、酸化ストレス時に各種抗酸化タンパク質の遺伝子発現を誘導することで生体の恒常性を維持している。我々は以前、Nrf2がPDGF刺激によるROS依存性のVSMC遊走を抑制することを報告した。本研究では、まだ明らかとなっていない血管修復段階のVSMCアポトーシスにおけるKeap1/Nrf2システムの役割について検討を行った。マウス大腿動脈にワイヤー傷害を施し、2週間後の血管組織におけるアポトーシス細胞をTUNEL染色により観察したところ、WTと比較してNrf2遺伝子欠損(KO)マウスにおいて有意なアポトーシス細胞数の減少がみられた。このアポトーシス細胞は、Nrf2が強発現している血管内膜および中膜層のVSMCで多く認められ、さらに傷害血管におけるKeap1の遺伝子発現が有意に減少していた。そこでラット大動脈VSMCにKeap1 siRNAを処置し、内在性Keap1をノックダウンしたところ、核内Nrf2の著明な増加と標的遺伝子Nqo1とHmox1の誘導が見られた。またKeap1のノックダウンにより核の凝縮を示す細胞が増加し、アネキシン-Vの結合およびTUNEL染色陽性といったアポトーシスの所見を示した。このアポトーシスは、Nrf2 siRNAのコトランスフェクションにより抑制されたことから、Keap1の機能不全によるNrf2の活性化によりVSMCのアポトーシスが引き起こされたことが示唆された。以上の結果から、Keap1/Nrf2システムは、血管傷害後のVSMCアポトーシス調節に関与することで血管リモデリングを調節していることが示唆された。
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© 2015 日本毒性学会
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