日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-192
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一般演題 ポスター
Crabtree効果の回避による薬物誘発性ミトコンドリア脂質代謝異常への影響
*大泉 久美子関根 秀一伊藤 晃成
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抄録
【背景】ミトコンドリアにおける脂肪酸β酸化は細胞内エネルギー産生を行う上で重要な因子の一つである。バルプロ酸等の薬物により脂肪酸β酸化等が阻害されると脂質異常蓄積(ステアトーシス)が誘発される。細胞内に蓄積した脂質はNile red染色等により評価する手法が汎用されているものの、依然としてIn vitroとIn vivoの間に乖離が見られる点も指摘されている。一方、In vitro細胞培養に汎用されるグルコース高濃度含有培地では、生体の肝臓と異なり細胞内ATP産生が解糖系に依存し、ミトコンドリアによるATP産生の割合が低下する (Crabtree効果)。そこで我々は、Crabtree効果を回避することによる脂質代謝への影響、及びバルプロ酸の脂質代謝への影響について検討を行った。【方法】ヒト肝癌由来細胞HepG2細胞を使用し、25 mMグルコース含有培地、及び10 mMガラクトース含有培地にて培養した。Crabtree効果が回避できていることをATP合成酵素の阻害剤オリゴマイシン(0.5 μg/ml)による細胞内ATP量を評価することで確認した。細胞内脂質代謝に対する影響は脂肪酸(0.5 mM オレイン酸/パルミチン酸混合物)を添加後、細胞内脂肪滴の経日変化を、Oil Red Oにより染色して得られた画像を解析することで評価した。【結果】グルコース培地からガラクトース培地に切り替え、培養24hr後にオリゴマイシンによる細胞内ATP量の低下が見られた。そこで、ガラクトース培地で培養24hr後に脂肪酸を添加した48hr後に脂肪酸不含培地に置換した時の脂質代謝を評価した結果、グルコース培地では細胞内脂肪滴が経日的に増加したのに対し、ガラクトース培地では脂肪滴の減少が見られ、後者では脂質代謝の亢進が認められた。さらに両培地で培養した細胞に脂肪酸とバルプロ酸を曝露したところ、ガラクトース培地においてのみ脂肪滴の減少が抑制された。以上の結果から、ガラクトース培地で培養することでミトコンドリアの脂質代謝が亢進し、より生体に近い条件で薬物誘発性脂質代謝異常の評価が行える可能性が示された。
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© 2015 日本毒性学会
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