抄録
化学物質のGHS分類は化学物質管理に有用だが、世界的に調和していることが望ましい。そこで、EUと日本におけるCMR物質(発がん性物質、変異原性物質、生殖毒性物質)のGHS分類を比較した。EUのデータベース(DB)を基にした場合、359物質がEUと日本の両DBに収載され、いずれかのDBで少なくとも1つの有害性クラスに該当していた。359物質のうち、274物質が発がん性、156物質が変異原性、196物質が生殖毒性で区分1あるいは区分2に分類されていた。これらの物質を3つのグループに分類した:すなわち、同じ有害性クラスと区分のもの(一致、C)、同じ有害性クラスだが区分が異なるもの(概略一致、RC)、および、有害性クラスと区分が異なるもの(相違、D)。発がん性では、196 (54.6%)、92 (25.6%)、71 (19.8%)物質が、それぞれC、RC、Dに分類された。71のD分類物質のうち、21物質はEUでは区分1Bだが日本では分類されておらず(すなわち、区分外あるいは分類できない)、4物質はその逆であった。生殖細胞変異原性では、260 (72.4%)、13 (3.6%)、86 (24.0%)物質が、それぞれC、RC、Dに分類された。86のD分類物質のうち、2物質はEUでは区分1Bだが日本では分類されておらず、7物質はその逆であった。生殖毒性では、223 (62.1%)、35 (9.7%)、 101 (28.1%)物質が、それぞれC、RC、Dに分類された。101のD分類物質のうち、15物質はEUでは区分1A/1Bだが日本では分類されておらず、12物質はその逆であった。これら61物質(C 21+4; M 2+7; R 15+12)における大きな相違は、適正な化学物質管理や校正な貿易に影響を与えかねず、科学的な是正が必要である。