日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-39
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優秀研究発表 ポスター
メチマゾール誘導性肝障害ラットモデルの作成及び肝障害発症メカニズムの解析
*赤井 翔上松 泰明常山 幸一織田 進吾横井 毅
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抄録
【背景・目的】メチマゾール (MTZ) は抗甲状腺薬として広く使用されているが,稀にヒトで肝障害を起こすことが報告されている。我々は,Balb/cマウスにグルタチオン合成阻害剤であるL-buthionine-(S,R)-sulfoximine (BSO) を投与することでMTZ誘導性肝障害マウスモデルを作成し,その肝障害発症にはinterleukin-4やeotaxin等T helper 2 (Th2) 細胞関連の免疫因子が関与していることを以前に報告した。本研究ではマウスと同様に非臨床安全性試験で使用されるラットを用いてMTZ誘導性肝障害モデルを作成し,その肝障害発症メカニズムの種差について検討した。【方法】雄性F344ラットに絶食条件下でBSO 700 mg/kgを単回腹腔内投与1時間後に,MTZ 20 mg/kgを単回経口投与した。また,Kupffer細胞を不活化する目的で塩化ガドリニウム (GdCl3) 10 mg/kgをMTZ投与48及び24時間前に静脈内投与した。MTZ投与6時間後に血漿及び肝臓を採材し,血漿中ALT及びHMGB1測定,肝病理組織学的検査及び免疫関連因子のmRNA発現解析を行った。【結果・考察】MTZ投与6時間後に小葉中心性の肝細胞壊死を伴ったALT値の上昇 (6522±969 U/L) が5/5例でみられ,マウスと同程度の肝障害であった。肝臓中では自然免疫に関連したmonocyte chemoattractant protein-1,やmacrophage inflammatory protein 2等のmRNA発現量上昇がみられたが,GATA binding protein 3やeotaxin等のTh2細胞関連免疫因子のmRNA発現変動は認められなかった。また,この肝障害はGdCl3投与で4/6例においてALT値上昇が抑制 (2806±1620 U/L) されたことから,ラットのMTZ誘導性肝障害の発症にはTh2細胞関連の免疫因子は関与せず,Kupffer細胞が主に関与することが明らかとなった。【結論】MTZはマウスとラットで同程度の肝障害を引き起こすが,その発症メカニズムは種間で異なることが示された。
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© 2015 日本毒性学会
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