日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-38
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優秀研究発表 ポスター
核内受容体活性化に着目した薬剤性肝肥大と肝発がんの関連性解析
*劉 舒捷川本 泰輔本田 大士池田 直弘吉成 浩一西山 直宏
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抄録
肝臓に発現する核内受容体の活性化は、異物を代謝・排泄するための酵素誘導を促し、肝肥大誘発に関与すると考えられている。適応反応を超えた肝肥大は発がん等の毒性影響に繋がる可能性が指摘されているが、発がんに関与する肝肥大誘発の機序は明らかになっていない。本研究では、肝肥大誘発物質の精緻なリスク評価の実現を目指し、化学物質誘発性の肝肥大について核内受容体の関連遺伝子に着目した検討を行った。
まず、トキシコゲノミクスのデータベースTG-GATEsを用いて、肝肥大誘発物質特異的に発現変動する遺伝子を探索したところ、その多くは核内受容体を介して誘導される異物代謝酵素遺伝子であった。肝肥大誘発と高い相関を示したこれらの遺伝子群を用いて、肝肥大誘発物質の発がん性の有無を、機械学習モデルの一つであるサポートベクターマシンで判別した結果、一致率は84.3%と良好であり、肝肥大性発がん物質に特徴的な代謝酵素発現パターンを得ることができた。次に我々は、肝肥大性発がん物質において特異的に変動する遺伝子群を抽出し、代謝酵素発現のみでは予測できない発がん性の機序を解析した。その結果、CAR、PXR、PPARなど既知の核内受容体や、炎症およびストレス応答関連のパスウェイの関与が示唆された。また抽出した遺伝子群を用いて発がん性の有無を、非遺伝毒性発がん物質18化合物および非発がん物質84化合物で検証したところ、一致率は83.3%であった。
したがって、本研究で変動が確認された遺伝子およびパスウェイは適応反応を超えて発がんに繋がる機序に関連していると考えられた。なお、核内受容体を介した酵素誘導と発がんとの関係性ついては、培養細胞を用いた詳細な検討を加える予定。本研究で得られた知見を基に、核内受容体レポーターアッセイやin vitro酵素誘導試験を用いた毒性評価の開発が期待される。
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© 2015 日本毒性学会
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