日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-4
会議情報

シンポジウム1 ヒトiPS細胞技術の薬剤安全性評価応用に向けた研究動向
ヒトiPS細胞由来神経細胞の安全性評価応用に関する基礎的検討
*板野 泰弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
医薬品による副作用の中で中枢神経系副作用は重篤性が高く、かつ非臨床試験からその発現を予測することが困難であるため(J. Toxicol. Sci. 2013)、臨床でのCNS副作用を的確に予測できる非臨床評価法の確立は、製薬企業にとって極めて重要な課題である。現在、一般的に用いられているCNS副作用の非臨床評価法は、in vivo試験としてはFOB法やIrwin法が主であり、in vitro試験としては初代培養神経細胞等の動物由来標本(主にラット)を用いた評価が中心となっている。しかし、いずれも種差の課題がありヒトでのCNS副作用の予測性は高くない。
このような状況下、近年、ヒトiPS細胞から神経細胞の分化誘導が可能となり、ヒト神経細胞を用いた安全性評価系にCNS副作用評価ツールとしての期待が高まっている。
そこで「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」神経チームは、市販ヒトiPS細胞由来神経細胞が成熟神経細胞としての特性を有しているか検証するために、神経細胞特異的細胞死の1つであるグルタミン酸受容体を介した興奮毒性に着目した検討を行った。
上記活動と並行して、厚生労働省が作成した重篤副作用疾患別対応マニュアルに記載されているCNS副作用について調査を行い、ヒトiPS細胞由来神経細胞の安全性評価としての応用が期待されるCNS副作用として痙攣・てんかんに着目した。これを受けて、神経細胞の自発性興奮を指標に、ヒトiPS細胞由来神経細胞の電気生理学的検討に着手した。
同マニュアルには末梢神経障害も取り上げられている。抗がん剤投与時に認められる薬剤性末梢神経障害がその代表例であるが、iPS細胞は中枢神経のみならず末梢神経の安全性評価への応用も期待されている。そこで、薬剤性末梢神経障害を念頭に置き、ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いて神経突起を主とした形態学的影響の検討にも着手した。
本発表では、「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム」神経チームの発足から現在に至るまでの活動成果を報告する。
著者関連情報
© 2015 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top