抄録
In vivo皮膚光毒性試験ではモルモットが汎用される。今回、我々は一般毒性試験で使用されるSD系ラットを用いた光毒性評価が可能か否かを検討した。SD系ラットでの光毒性評価の妥当性を確かめる為に、陽性化合物及びReactive Oxygen Species assayにて光毒性陽性と判定された医薬品を用いて、Hartley系雌モルモットとSD系雄ラットで経皮及び経口投与による光毒性評価を実施し、結果の一致率を調べた。
評価化合物数は、経皮投与試験で22個、経口投与試験で13個とした。投与濃度は既報または最大耐量を参考にし、医薬品については上限を10 w/v%(100 mg/mL)とした。紫外線照射時点は経皮投与は投与30分後、経口投与は既報またはTmaxを参考に設定した。薬物投与後、紫外線(UV-A及びB)を照射し、光毒性の有無を判定した。その結果、経皮投与で光毒性を示す化合物は、モルモットとSD系ラットともに10種であり、一致率は100%(22/22化合物)であった。経口投与については、モルモットとSD系ラットで8種であり、一致率は85%(11/13化合物)であった。以上の結果より、SD系ラットはモルモットと同程度の光毒性検出力を有することが明らかとなった。
次に、一般毒性試験におけるTK採血用のサテライト群(TK採血群)を用いた光毒性試験を想定して、SD系ラットを単回投与群と反復投与群及びTK採血群に分け、陽性化合物である8-Methoxypsoralenを経皮または経口投与した。それぞれ最終投与終了後に紫外線を照射し、光毒性の有無を判定した。結果、単回、反復及びTK採血群ともに光毒性陽性反応を示し、TK採血の実施は光毒性評価に影響を与えないことが確認された。以上の検討から、一般毒性試験におけるTK採血群での光毒性評価は可能であることが確かめられた。一般毒性試験に光毒性評価を組込むことにより、動物及び試験数の削減、適切な照射時間の設定、反復投与による影響評価が可能となり、評価期間の短縮、広域な毒性情報の取得及び動物実験の3Rに貢献すると考えられた。