日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-2
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シンポジウム2 次世代研究者セミナー:薬物の安全性評価における新たな挑戦
薬物代謝酵素発現細胞及び誘導評価細胞を用いた薬物性肝障害研究について
*佐々木 崇光熊谷 健永田 清
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抄録
我々は、日常生活において数多くの化学物質に暴露されながら生活をしている。特に医薬品や健康食品は、様々な効果を期待して意図的に摂取するため、日常的に暴露される化学物質の中でも比較的高濃度で直接体内に取り込まれる。これらに含まれる化学物質の多くは、Cytochrome P450 (CYP)に代表される薬物代謝酵素によって解毒される一方で、代謝活性化を受け、薬物性肝障害等を惹起する物質に変換されることがある。また、医薬品や健康食品は、同時に複数製品を摂取することが多く、CYPの活性阻害や発現誘導を介した相互作用に起因する有害事象が報告されている。特に、健康食品に関しては、近年その使用が急増しているにも関わらず、毒性あるいは相互作用情報は少ない。そこで我々は、医薬品や健康食品自体が引き起こす毒性評価系の開発に加え、CYPの活性や発現量に影響を及ぼす健康食品を同定し、相互作用に起因した有害作用発生リスクの評価系構築を目指した。毒性及びCYPの活性阻害による相互作用は、薬物代謝に関与する主要なCYP分子種5種類(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4)をHepG2細胞に同時発現させ、ヒト肝細胞における各酵素活性を模倣した細胞を作製し評価を行った。誘導評価に関しては、レポーター遺伝子を利用したCYP3A4遺伝子誘導評価細胞を用いて行った。現在市場で流通し且つ使用が確認された健康食品約170製品について検討した結果、ウコン系及びダイエット系健康食品等が複数のCYP分子種を同時に強く阻害し、また、評価を行った製品の約4割程度がCYP3A4を誘導することが明らかとなった。さらに、グルコサミン系健康食品においては、相互作用は起こさないものの強い細胞障害性が認められた。これらの情報を基に、薬物性肝障害作用を有する既存の医薬品と併用することで、その有害作用が増強されるか予測する。また、肝分化iPS細胞を用いてヒト肝細胞における薬物代謝に起因した細胞毒性あるいは相互作用の評価を行う。
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© 2015 日本毒性学会
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