日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-3
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シンポジウム2 次世代研究者セミナー:薬物の安全性評価における新たな挑戦
化学物質の複合影響による細胞毒性発現:AhR活性化を指標として
*関本 征史吉成 浩一出川 雅邦
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抄録
 環境化学物質のTDI(耐容一日摂取量)や農薬、食品添加物によるADI(一日摂取許容量)は、それぞれの物質単独による毒性試験を元に定められている。しかし、現実には単一の化学物質に曝露されることはあり得ず、その複数の化学物質による複合影響を予測することが大きな課題となっている。
 芳香族炭化水素受容体(AhR)は、異物代謝酵素の誘導のみならず、脂質代謝や免疫細胞の分化などにも重要な役割を果たしており、環境化学物質による毒性発現の標的分子の一つとされる。演者らは、様々な化学物質によるAhR活性化について検討を行ってきた結果、医薬品や食品添加物の中に、既存のAhR活性化物質の作用を増強するものを見いだしている。例えば、Nicardipineをはじめとするジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は、ヒト肝がんHepG2細胞において、発癌性多環式芳香族炭化水素によるAhR依存的な代謝活性化酵素(CYP1A酵素)の誘導や、細胞核DNAの化学修飾(DNA付加体形成)を増強する。
 このような例から、少なくとも細胞レベルにおいては、複数の化学物質による複合曝露が、核内受容体や類似の受容体型転写因子の活性化を介した毒性発現を修飾しうることが示唆される。薬品や農薬をはじめとする種々化学物質による核内受容体の活性化については、数多くのデータが蓄積されつつある。したがって、この受容体活性化を介した複合影響の発現機構を明らかとすることは、化学物質の複合影響(複合毒性)の予測にも大きく貢献するものと考える。
 本講演では、演者らがこれまでに明らかとしてきたAhR活性化における複合影響の例や、その発現機構に関して現在行っている研究を紹介したい。
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© 2015 日本毒性学会
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