抄録
肝臓は高濃度の薬物曝露を受け,その代謝を担う重要な臓器であり,医薬品の毒性標的となることが多い.医薬品の非臨床安全性試験としてげっ歯類及び非げっ歯類を用いた反復投与毒性試験が実施されるが,これらの毒性試験では肝毒性を示さなかった医薬品候補物質が臨床試験段階や上市後にヒトで肝障害を引き起こし問題となることが多い.そのため,近年,製薬企業では,肝臓に対して安全性の高い医薬品候補を創製するために,動物での毒性試験に加えて,培養ヒト肝細胞等のヒト由来材料を用いた毒性評価を創薬初期に実施するケースが増加している.本発表では,最新の薬物性肝障害評価法について,現在,活用される評価法を実例も含めて発表する.
薬物性肝障害のバイオマーカーについては,従来,肝細胞傷害時に鋭敏に変動するALTや肝機能の低下にまで及んだ際に上昇するビリルビンを含めいくつかの有効なバイオマーカーが利用されている.一方,近年,肝障害に対する特異性の向上等を目指して,新規のバイオマーカーが近年,探究されつつある.本発表では,既存の肝障害バイオマーカーの検出感度や特異性及び新規バイオマーカー研究の現状について発表する.