日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-1
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シンポジウム6 ヒト副作用リスク最小化に向けたトランスレーショナルリサーチ:医薬品の副作用研究 in vitroから臨床まで
トランスレーションに有用な試験系構築の基本的考え方: ROSアッセイを例にして
*細井 一弘小島 肇
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抄録
医薬品開発におけるトランスレーショナルリサーチは,創薬ターゲットの特定から前臨床試験を経て患者集団での有効性,安全性検証にいたる長期に及ぶプロセスを一連の活動としてとらえ,効率的に進めることを目的として実施されている.医薬品開発の成功確率が低下している状況下において,前臨床試験を見直して医薬品開発投資当たりの成功確率を高めて,効率化することはトランスレーショナルリサーチの観点で有効と考えられる.前臨床段階での効率化には,(1)既存技術の改善,(2)新規試験系の確立,(3)要件変更などが有用であるが,単独で実行しても効率化へのインパクトは大きくなく,公的な評価フローやガイドラインに記載することによって,大きな効果を期待することができる.化学物質に人工太陽光を照射した際に産生される活性酸素種(Reactive Oxigen Species, ROS)の量を指標として光化学的反応性を評価するROSアッセイは予測性,スループットともに高い評価系として探索研究段階での光安全性評価の初期スクリーニングに利用されていた.演者らはICHの光安全性評価ガイドラインにROSアッセイを収載することを目的とした多施設バリデーションの運営に参加し、試験結果について,第三者評価を受け,ICH S10トピックの専門家作業部会に提示し,光安全性に関する初期評価に利用可能な試験法としてガイドラインに収載させることができた.ROSアッセイの多施設バリデーションの計画立案,実施,結果の評価,報告書作成,学会・論文発表,第三者評価,ガイドライン収載に至る一連の経験から,新規試験法を確立し,広く利用されるには通常の安全性評価とは異なる知識,経験,配慮も重要であることを学んだ.本発表ではトランスレーショナルリサーチに有用な試験系構築の基本的な考え方を紹介する.
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© 2015 日本毒性学会
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