抄録
生体リズムは生命維持に不可欠な機構であり、生体防御や代謝に関わる機能も量的・質的なリズムを示す。そのため、薬毒物の生体影響を正確に把握するには生体リズムの関与を考慮する必要がある。薬物の効能や副作用の強さは薬物の服用時刻によって異なることが知られており、この現象は時間薬理学として確立されると共に、生体リズムと治療を絡めた時間治療として臨床の場で着目・応用されてきている。一方で毒性学においては生体リズムへの関心は現時点ではそれほど高くない。薬物で明らかな日内感受性時刻差が観察されることから、毒物についても解析を進める必要があるのではないか?実際、我々はカドミウム等の金属毒性の発現強度が投与時刻によって顕著に異なることを見出しており、生体リズムを考慮した毒性学である「時間毒性学」を展開してきている。本講演では、我々が展開する「時間毒性学」の意義について、日内感受性時刻差の視点から金属毒性の結果を示しながら紹介する。また現代社会における夜型生活やシフトワークなどにより生体リズムが攪乱された場合に生じる生体影響を毒性学的視点から考察したい。
「時間毒性学」考える上で、時間生物学の概要・応用を知ることは重要である。そこで本シンポジウムでは、薬物治療や薬物の取込・排泄、さらにエネルギー代謝調節・栄養学の視点から時間生物学的研究を展開する4人の先生方に講演を依頼した。