日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-2
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シンポジウム7 毒性学における生体リズムの重要性を考える
中枢神経系作用薬の時間薬理学とニューロン新生
*守屋 孝洋竹生田 淳茂木 明日香佐々木 崇志前川 知子鈴木 登紀子柴田 重信太田 英伸小林 正樹
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抄録
生命には自律的なリズム発振機構である体内時計が備わっており、睡眠覚醒や心血管機能、代謝機能などにおける24時間周期の日内リズムを生みだしている。体内時計は全身を構成する個々の細胞に備わっており、時計遺伝子と総称される十数個の遺伝子の転写・翻訳のネットワークがそのリズム発振源であるとされている。すなわち、細胞個々がひとつの「細胞時計」として振舞い、それらが協調して「組織時計」、「臓器時計」として機能することによって、様々な生理機能における日内リズムを形成する。
一方、細胞の増殖は個体発生や臓器再生、造血など個体が生存する上で極めて重要な役割を果たしているが、生体内のいくつかの組織では細胞分裂の頻度に日内リズムが認められる。癌細胞の増殖における日内リズムを考慮した抗癌剤の時間治療はすでに欧州を中心にして臨床応用されているが、時計遺伝子がどのような仕組みで細胞周期を制御しているのかについての統一的な機構は明らかになっていない。薬物や毒物による細胞増殖阻害は多くの薬物の副作用や毒性発現の原因になっているため、体内時計による細胞増殖制御機構の解明は薬物の副作用に対する新しい回避方法の開発にもつながることが期待できる。
ところで、海馬歯状回に存在する神経幹細胞は増殖能やニューロンやグリアへの多分化能を併せ持ち、記憶・学習等の脳機能だけでなく、気分障害やてんかん、統合失調症の発症にも関与している。私たちは、神経幹細胞の諸機能における日内リズムに着目して解析を進め、生体内および培養条件下でその増殖活性が日内リズムを示すことや、時計遺伝子変異によって細胞分裂パターンが変化していることを見出した。本シンポジウムでは、時計遺伝子による細胞周期の制御機構や、神経幹細胞の分子時計に対する中枢神経系作用薬の影響を紹介し、薬物や毒物による作用発現における日内リズムについて考察したい。
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© 2015 日本毒性学会
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