抄録
概日時計(約24時間周期の体内時計)は、様々な生理機能に日内変動をもたらすことで生体の恒常性維持に役立っている。概日時計により調節された生理機能を理解し、投薬時刻の違いによる薬理作用の増強、副作用の軽減などを考慮する「時間薬理学」という考えは、近年、臨床においても浸透しつつある。一方で、時間薬理学と同様に、食と体内時計の関係を考える「時間栄養学」もまた、近年、研究者のみならず一般社会にも浸透しつつある学問である。時間栄養学では、「体内時計作用栄養学」と「時間栄養学」の2つの側面に分けて考えることができる。つまり「体内時計作用栄養学」では、どのような食事内容を、どのタイミングで食べるかを考慮することで、食事、体内時計を介した健康科学を考えることができる。特に朝日を浴びると共に朝食を食べることは、体内時計を早く進める効果が期待できる。また、「時間栄養学」として、吸収、代謝、脂肪合成などに時計制御があることを考慮した食事タイミング、食事内容を提案できる。本シンポジウムでは、時間栄養学に関連した最新の知見を、我々の研究室の実験方法、実験結果と共に紹介する。