日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-5
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シンポジウム7 毒性学における生体リズムの重要性を考える
時計遺伝子による代謝調節機構の解明とその毒性学への展開
*榛葉 繁紀
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抄録
生体リズムの中でも約24時間周期で自立振動する概日リズム(サーカディアンリズム)は、動物の睡眠・覚醒をはじめ、生物に広くみられる24時間周期のリズミックな生体機能の発現に必要であるとともに、明暗サイクルや温度変化等の地球環境の周期的変動のなかで生体が恒常性を維持するためにきわめて重要な役割を果たす。したがってサーカディアンリズム機能の獲得とその発達は、進化の過程で生物がとった適応戦略の1つとして注目すべきものである。サーカディアンリズムを生み出す体内時計システムは、複数の時計遺伝子の相互作用により転写・翻訳レベルで調節される。近年、これら時計遺伝子のノックアウトマウスを用いた検討から、細胞増殖、免疫機能、記憶そして代謝調節など多くの生理機能に時計遺伝子が関与することが明らかになってきた。我々は体内時計システムのマスターレギュレーターである時計遺伝子Brain Muscle Arnt-like Protein 1 (BMAL1)の全身性ならびに種々の組織特異的ノックアウトマウスを作製し、その解析から体内時計システムによる代謝調節機構の解析を進めている。例えば、全身性ノックアウトマウスは脂質代謝能が低下しており、そのため脂質異常症を発症する。また骨格筋特異的ノックアウトマウスでは筋繊維のタイプが変化し、持久力やエネルギー代謝能が著しく増強する。肝臓特異的ノックアウトマウスでは、他臓器連関を介した血糖値やホルモンレベルの変化が認められ、肝臓のBMAL1を介したダイナミックな代謝調節が示唆される。
 本講演では、これら時計遺伝子のノックアウトマウスの表現型から体内時計システムによる代謝調節機構を議論したい。また胆汁酸代謝を軸に、体内時計システムによる異物代謝の調節を考察する。
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© 2015 日本毒性学会
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