日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-1
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シンポジウム8 環境毒性学の新たな潮流 ―環境汚染物質による生活習慣病、生活環境病の増加・増悪とそのメカニズム―
生活環境病・生活習慣病と環境要因
*高野 裕久
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抄録

近年、アレルギー疾患に代表される生活環境病や、肥満、糖尿病を代表とする生活習慣病が激増し、新たな現代病となっている。これらの悪化、増加要因としては、遺伝要因よりむしろ環境要因の急変が重要と考えられており、種々の環境要因の中でも、日々増加しつつある環境化学物質や粒子状物質などの環境汚染物質が及ぼす影響に注目が集まっている。
一方、環境汚染物質に対して影響を受けやすい高感受性・脆弱性群が存在することも指摘されている。例えば、粒径2.5μm以下の微粒子(PM2.5)に関し、疫学的な報告では、呼吸器系、免疫系や循環器系、代謝系の疾患を持つ人、特に、気管支喘息や気管支炎、虚血性心疾患や糖尿病の患者さんの症状が悪化しやすいことが報告されている。この事実は、アレルギーをはじめとする生活環境病や糖尿病等の生活習慣病の患者さんが、ある種の環境汚染物質に対し、高感受性、あるいは、脆弱性を示すことを示唆するものと考えられる。
現在、わが国を含む先進国においては、高毒性物質の曝露や環境汚染物質の大量曝露の可能性は減じている。しかし、低毒性物質の少量曝露は普遍的に広がり、ありふれた疾患である生活環境病や生活習慣病の増加・悪化との関連が危惧され始めている。
本シンポジウムでは、ありふれた環境汚染物質が、ありふれた現代病(生活習慣病やアレルギーを代表とする生活環境病)を悪化・増加させうるという実験的検証と増悪メカニズム解明の現状・進展を紹介し、環境毒性学に新たな視点を加える。本講演はそのイントロダクションの役を担う。

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© 2015 日本毒性学会
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