抄録
PM2.5や黄砂といった環境中微粒子、尿酸結晶やアミロイドといった生体内微粒子など、我々の身の回りには微粒子状物質が溢れており、日々、曝露され続けている。また近年では、粒子径10 nm~100 nm(抗体やウイルスと同等サイズ)のナノマテリアルの開発・実用化も進んでおり、工業用製品・電化製品・日常生活用品・医薬品・食品など、様々な製品として我々の生活の質的向上に寄与している。一方で、食品や香粧品の安全性がこれまで以上に求められている今日、環境中微粒子がアレルギー疾患や心疾患を誘発することが疫学的に明らかなことも相俟って、ナノマテリアルの安全性情報が未だ不十分であることが世界的に問題視されている。そのため、21世紀テクノロジー産物としてのナノマテリアルには、有用なのは当たり前、そのうえで高度な付加価値としての安全性をも有したナノマテリアルを創出すること、そして、そのための情報や技術を集積、発信することが待望されている。本観点から我々は、Sustainable Nanotechnology(安全・安心に持続的に社会受容されるナノテク)研究の一環として、種々NM・sNMの物性・品質を解析すると共に、リスク解析の基盤となる細胞内・体内動態(ADME)と一般毒性・特殊毒性(T)を定性・定量解析したうえで閾値追求を図り、物性・品質とADMETの連関評価に資するナノ安全科学(Nano-Safety Science)研究を推進してきた。さらに、ADMET情報を基盤として、安全なナノマテリアルをデザインするため情報を提供するNano-Safety Design(ナノ最適デザイン)研究にも注力している。本発表では、我々が推進するナノ安全科学研究について、胎児や乳幼児といった脆弱な個体に対する影響評価<こどものナノ安全科学>と共に、ナノマテリアルの自然免疫・獲得免疫といった免疫機能への影響評価<ナノ免疫学>に焦点を絞りご紹介させて頂き、各方面からのご批判、ご意見を賜りたい。