日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W3-1
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ワークショップ3 イオンチャネル型受容体の機能とその毒性学的な意義
TRPV1, TRPA1を介した侵害刺激受容の分子機構
*富永 真琴
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抄録
外界侵害刺激の多くは感覚神経によって感知され、その中心的な分子群としてTRPチャネルが挙げられる。中でも温度感受性TRPチャネルとして知られるカプサイシン受容体TRPV1とワサビ受容体TRPA1は複数の侵害刺激を受容し、感覚神経の一部のポリモーダル受容器を説明する分子である。TRPV1は1997年に遺伝子クローニングされ、2000年には遺伝子欠損マウスの表現型が報告されて、侵害刺激受容体として機能することが個体レベルで確かめられた。2013年には低温電子顕微鏡を用いて原子レベルの構造が解かれている。TRPA1は2003年にマウスの侵害性冷刺激受容体として報告されたが、現在ではヒトTRPA1に温度感受性はなく、昆虫から鳥類までのTRPA1は熱刺激受容体であることが明らかになっている。しかし、TRPA1の侵害性化学物質感受性は種を超えて保存されており、TRPV1ともども多くの侵害性化学物質受容体として機能することは明らかである。2006年にはTRPA1遺伝子欠損マウスの表現型が報告され、個体レベルで侵害性化学物質受容体として機能することが確かめられている。その意味で、TRPV1, TRPA1の環境毒性センサーとしての意義は大きい。ここでは、TRPV1, TRPA1の構造、機能、個体における生理学的意義に関して自身の研究室の成果も含めて概説したい。
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© 2015 日本毒性学会
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